先日ZINEフェスに行った時、袋綴じの本を買いました。お店番をしている子にどういうことか聞いたら、ちょうど作者の子は席を外していて、自分は代わりなのですが、と説明してくれました。(子と言っているのは、かなり若い・だいぶ若い・つまりかわいらしい若者なので。つい”子”と言ってしまいたくなる)
「恥ずかしい過去が書いてあるので、どうしても袋とじにしたかったんだそうです。私にも見せてくれませんでした」
なるほど、読まれるのが恥ずかしい、でも袋綴じにしてまでも書かずにはおれない、しかも、それをZINEにして売る。そこまでのことってなんだろう?
見ず知らずの女の子が書いたZINEが少し気になってしまい、商業誌とは違って内容が保証されないままクリエイター応援のつもりで買ってみました。
しばらく忙しかったので読む時間がとれなかったのですが、ちょうどスマホと離れたくて仕方がない時間があり、これはチャンスと、いそいそ袋綴じを開き、読了。
世の中の人々は、袋綴じを開いた経験は何回ぐらいあるのでしょうか。最近だと、ニュースレターやブログを一部有料にすることができるので、いわゆる袋綴じ状態にすることも可能ですが、紙の袋綴じページをハサミで切って開ける感覚が久しぶりで、「私は一体何をしてるんだ」と、笑いました。まだ、この感覚にドキドキできるんだ。
物語は15ページほど。作者の実体験に基づく、まさに「恥ずかしいこと」でしたが、当事者でない人が読んでも恥ずかしいと思うことは全くない、どこかの誰かの青春の一ページ。恋愛が始まりそうなときに起こる、ちょっと曖昧で、少し怖くて、お互いの距離に歯切れの悪さがあったその時間を、叙事的にうまく描写していました。第三者としては袋綴じにしなくてもよい内容なのですが、本人は自分のクレジットで出すには居た堪れなかったのでしょう。その気持ち、わかるよ。でも出したいんだよね。文字にすること、それを誰かに読んでもらうことでしか成仏できないこともある。この袋綴じは、読者のドキドキを創発させるためのアンダーグラウンドなものではなく、作者のもどかしい気持ちの発露がなせる装丁だったのでした。
個人的な恋愛関係や人間関係のいざこざ。誰かに言いたいけど、諸般の事情で言えないことが多い。言ったところでその当事者でないと「何でそんなことになっちゃったのかよくわからない」。大小いろんな種類の騒動があるけど、結果だけしか見えない周りの人は、何が起こったのかわからない。今回読んだZINEも、書かれていない余白に色々なことがあったのだろう。自分と無関係の人間模様を想像するのは、無責任でとても楽しい。それに自分の似たような過去もくっつけて、苦い気持ちを思い出したりして。
実社会では本当に色々なことがありますね。それは「〇〇騒動」とか「事件・事故」とか「◯◯の乱」とか歴史の教科書に載る体裁のごとく「点」じゃなくて、複雑に織り込まれた幾何学色の毛糸のように、遠い遠い過去から始まっている因果の渦がある。だから、「何があったの?」と聞いたとて、人それぞれでバラバラな答えが返ってきたりします。Aさんの視点から見えることとBさんの視点から見えることは、まるで景色が違う。己の経験と価値観が、フィルタになっている。ちゃんと話し合いをしたの?とか、そんなことが起こる前になにかできなかったの?とか。言いたくなることはたくさんあるけど、どれも真実でどれも嘘。自分を守りたいという無意識も入るから、「私は悪くない」という気持ちも、また邪魔をする。結果、言葉にするのは難しい。
ただ、なるようにしかならないし、なるべくしてなっている。私たちには、起こってしまったことを、後から「あの時ああなってて本当に良かったね」「結果的に良いことしか起こってなかったね」と思えるように、未来に働きかけをすることしかできない。だって、世の中のことは大抵がフィクションなのだから。自分でフィクションを作って、自分で世の中を楽しむしか、勝ち筋はない。
スティーブ・ジョブスのConnecting the Dotsってのも、そういうことだと思うのですよね。
#もう古いか?
#しんめいP「自分とか、無いから」にもそう書いてあった気がする
なので、ZINEを作った女の子よ。あなたの思い出は立派にフィクションをフィクションたらしめている。前を向いているあなたの姿が見える。
あなたの清々しい顔は、美しいよ。
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