こんばんは。久しぶりの廃人土曜日を満喫しました。エネルギーチャージできました。
何をしていたかというと、以前から見たいと思っていたドラマ「レディ・ジョーカー」をアマプラで一気見。高村薫原作の骨太社会派刑事モノです。大昔に原作を読んでいたのですが、内容を忘れており、純粋に楽しむことができました。キャスティングがはまりすぎ!やはりこうでなくては。。
昔から社会派ミステリーがとても好きです。がんじがらめで派閥と縄張り争いが蔓延する警察組織の中で、孤独に奮闘する刑事が主人公の作品は世の中にとても多いですが、レディ・ジョーカーもその一つです。高村薫はシリーズもの作家というイメージはないのですが、この作品は数少ないシリーズものと言ってよいと思います。
警視庁警部補である合田雄一郎を主人公としてシリーズ化された推理小説。
マークスの山 (1993年3月)※直木賞受賞
照柿(1994年7月)
レディ・ジョーカー(1997年12月)
太陽を曳く馬(2009年8月)
冷血(2012年11月)
我らが少女A(2019年7月)
全部読んでいるわけではないのですが、一貫して高村薫は犯罪者を「悪」として描いていません。社会派ミステリーを愛読してきたので、犯罪者の過去に沢山の社会的背景が絡み合っていることがよくわかり、善悪というものが白黒はっきりと語ることなんてできないといつも思います。
最近も凄惨な事件が相次いで起こっていますが、そういうのを見ると思い出すのが、津久井やまゆり園で起こった殺傷事件に対し、この奥田さんのお話です。
僕は、彼とは違う人間だと一線を引けない。自信がない。彼(植松)をみな、全くの他者・別人・特殊な人間だと一線を引きたがる。自分たちとは違うと言いたい。だが、やはり彼は時代の子である。他人とは言えないのではないか。もし自分が誰も見向きもしないという状況に追い込まれたら、人を傷つけてでも一発逆転したいと思うのではないか。弱さとか貧しさとかみっともなさこそが、人間が共同体を作っていく上での絆になるのではないか。
植松くんを生み出した社会全体の価値観・理念に対して、私達はどうカウンターカルチャーを作れるか。
彼を死刑にしても、それは彼が出した問いの答えにはなっていない。
生きている意味の有無や生産性至上主義ではなく、そして置かれた環境や状況を自己責任論で済ますのではなく、傷の社会化。この議論を重ねていかないと、社会は良くなっていかない。社会派ミステリーの存在意義の一つもここにあると思います。
TVのワイドショーでは、ヴィヴィットな表面的側面だけが取り扱われていて、当日の犯罪者の動きや、一方的に責め立てていたり、コメンテーターは「信じられないですよね」なんて言って終わっていたり(そりゃあなたは信じられないだろう)、近所の人の「挨拶も普通にするしいい人でしたよ」みたいな声だけ拾って流したって、何の進展もないわけです。正義という名のもとに社会的制裁を与えたところで、新しい犯罪者が生まれることを予防できるわけがない。
私は性善説を信じているので、犯罪を犯した人には間接的には社会的な原因があると思っています。犯罪者を作っているのは私自身。私も、一線は引けない。あれは私なのかもしれない、と。たまたま生まれた環境と重ねた経験から犯罪を侵さずにすんでいるだけ、ということを共通認識として、そこから議論をスタートして、ワンアクションを起こしていくことが必要なんじゃないのかな…と思うのです。
今回の「レディ・ジョーカー」も、それぞれ苦しみを背負って生きてきた人たちが起こした誘拐事件を題材に取り上げていましたが、犯罪者を作り上げたのは紛れもなく、作り上げてきた社会構造なわけです。ワイドショーでは、犯罪者の背景まで取り扱ってくれませんから、こういう作家が取材して作った物語(ややノンフィクションに近い)を読んで、ストーリーが面白いということの後に、じっくり考える必要があるのだと思います。
高村薫の作品以外にオススメなのがこちら。だいぶ長い間読んでないので、読み返そう。
浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。
#タイトルがいい
#読んだ後このタイトル見ると泣ける
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