#183 この血が反体制である所以
100th Happy Birthday
こんばんは。こんにちは。月曜日が始まりました。何気なくGmailを見ていたらSaaSスタートアップのイベントプロモーションメールが来ていたのですが、差出人が前職時代の古い後輩の名前で、「ぬおぉ」と声が出ました。袂を分かって活躍しているさまを知れるのはいいものです。
今日は私の父方の祖母の100歳の誕生日でした。足腰は弱くなっているようなのですが、杖なしで歩けるし、頭もぼけてないし、誠にめでたい100歳です。北九州にいるのでちょっと遅いですが夏に帰った際にお祝いしようと思っています。私の家族以外の親族はみな北九州に住んでいるので、お祝いパーティの模様が動画で送られてきました。おそらく祖母は食べないであろう大きなホールケーキにろうそくが刺さっていて、「フーして」とせがむひ孫に、仏壇の蝋燭を消すように手を振って消そうとしていた祖母。毎日仏壇を拝んでいるのだから、蝋燭の火は手で消すのが普通よね。
仏壇には、私の祖父および曽祖父母の仏様がいます。
私の祖父は40代で早くに亡くなっています。もちろん会ったこともないし、あまり祖父の話を聞いたことはありません。みんな祖父の話をしないのです。断片的に聞いた情報では、戦後に現三菱ケミカル（当時の三菱化成）で働いていて、病気で亡くなったということですが、父や叔父たちが酒を飲みながら、「あれは会社のせい」とボソボソと話しているのを小耳に挟んだことがあったのを思い出しました。
今、ちょっと調べてみたところ、三菱化成の黒崎工場では、昭和32年にベンジジン中毒が発生していたことがわかりました。ベンジジンは発がん性物質。これが原因で膀胱がんを発症し、多くの人が命を落としたそうです。ただ、会社側がなかなかこれを認めなかった。
患者、労働者、医師が集まり、告発の大運動を始め、朝日新聞が取り上げて報道したこともあり、労働省は三菱化成黒崎工場における膀胱ガンの実態をようやく明らかにしたそうです。死亡7名、労災認定患者61名、要注意者371名。ベンジジンはガン発症まで平均20年間という潜伏期間をもつ物質であり、昭和29年に一人の膀胱ガンの死者を出しながら、以来時間差で多くの犠牲者を出してきて、十数年ののち、その一部が公表されたというのが実態でした。
国立国会図書館のサイトから、昭和46年の参議院社会労働委員会での議事録を掘り起こしてきました。
「因果関係がわからない」「医師の見解が食い違う」とかウダウダゴチャゴチャ言っていて、読んでいてワナワナするものがあります。これだけの数の被害者が出ているのが明らかに異常なわけですが、当時の国家や会社（資本家）などの権威は、人の命の重さに対し、戦争気分が抜けきれず軽んじていたのでは？こういうことは、三菱化成以外でも、多くの企業の現場で沢山あったんじゃないかなと思います。
一応、現・三菱ケミカルはこんな補償を続けている模様。
石綿（アスベスト）の使用に起因する健康障害が社会的に取り上げられる中、当社において過去、一部の業務で石綿を使用していたことが確認されており、法令に則り適切な対応を行っております。
また、石綿以外の健康管理手帳の対象物質（後述）を使用された方のうち、当該物質の使用期間が短い等の理由で健康管理手帳の交付対象から外れた方につきましても、ご希望があれば年に１回「退職者健康診断」を受診いただける様になっております。
石綿を始め対象の化学物質は、取り扱い後、長期間を経て健康に影響が生じてくる可能性があるといわれており、当社におきましても該当物質の取り扱っておられた方が退職後に発症し、労災認定された事例もあります。
「退職者健康診断」はこうした点を踏まえ当社独自に実施しているものであり、在職中に対象物質を取り扱っていた方を対象としています。
祖父は結局、労災認定されないまま亡くなったと聞いています。なので補償金もなく、生活費は大変だったろうなと思います。もちろんこども達は何の選択の余地なく高卒です。
父がなんとなく反体制・反権威である理由がようやくわかりました。私も漏れなく反体制・反権威。
#愛読紙は当然朝日です。
ただ、地道に告発運動をしてくれた人たちのおかげで、この労働委員会の翌年の昭和47年に、労働安全衛生法が施行されました。
祖父の死後、おそらく悔しい気持ちを持ちながら、女手一つで3人の子供を育て上げてきた祖母の力強さはすごいです。今、週一回病院に行っているそうですが「どこも悪いところがない」と言われるそうです。皮膚科でシミとかを取ってもらったりしています。今までは、祖母がぼけずに健康に長生きしている秘訣は、運動・手仕事・不動産・地域コミュニケーション（地域では知らない人はいない）だなと思っていたのですが（それも真似できそうにない）、奥底には強く生きることを誓った悔しい気持ちがあったんじゃないかと思うのです。でも、この祖父の話は一度も聞いたことがないし、毎日明るくてサバサバニコニコしている祖母なので、わかりません。
この話、今更聞いていいものかどうか悩みますが、やはり知らずにいるのは嫌なので、夏に帰った時にちょっと話を聞いてみようと思います。
しかし、本当にしばらく会ってない親族。いつの間にかお嫁さんが違う人になっていたり（笑）、新しいひ孫が増えていたり、叔父の顔が父にしか見えなかったり、ギャル男だった従弟たちは悪い２ブロックのオッサンになってるしで、隔世の感ありです。私も同じように歳を重ねています。時はどんどん過ぎていくので、早く帰って祖母に会いたい、会って話を聞いておきたいなと思います。
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