#160 中間のやつらが何もしないから -2
こんばんは。こんにちは。
先日のPostで権力の話をしましたが、これは私が普段の生活の中で感じていることを中心にして書きましたが、今の世論も「権力」にまつわる痛ましい議論がようやくされはじめてきました。
旧来型のメディアではないNewsPicksにて、かなり多面的に取材されたわかりやすい記事が出ていました。会員限定のようなので、会員の方は是非読んで頂きたいです。
そして、寄せられていたコメントに、「そうそう、これが言いたかったのよ」という内容がいくつもあったので、一部抜粋させていただきます。
葉村直樹さん
相互依存関係が生み出す奇妙な商習慣や、そこに隠されたアンタッチャブルな伏魔殿的な世界は、実はマスメディアとタレント事務所に限らず、その規模の大小はあれ、そこかしこに存在するのがこれまでの日本であり、大袈裟に言うとそれが日本の経済を支えて来たのも事実でした。
それが海外からの圧力と、ウェブを通じて、大きなうねりとなったというのも、なかなかに感慨深いものがあります。あらゆる業界で日本国内で蔓延る同様の構造が、これを発端として崩れていくことをこれからさらに私たちは目撃することになるでしょうし、そうあるべきとも思いますが、なかなか一筋縄には行かなそうです。
伏魔殿はそこかしこにありますね。そしてそれが日本の成長の原因であり結果であったと。そしてこの変化もまた海外からの圧力(黒船的な)ということか…。
宇田川元一さん
これは組織論研究でいうところの「資源依存関係」によって起きた問題だと言えます。簡単に説明するならば、組織は重要な資源を握っている外部主体に、非常に強くコントロールされるということです。様々なメディアは、ジャニーズタレントという重要な資源を提供する主体であるジャニーズ事務所から非常に強くコントロールされていました(余談ですがこの理論を応用して作ったのが、クリステンセンのイノベーションのジレンマのコンセプトです)。そして、その中で出来上がったエコシステムがこれまでのテレビや出版業界などコンテンツ産業で機能してきたわけです。
しかし、これまでにすでに起きていることは、テレビを中心としたメディア・コンテンツが、デジタルメディアの発展で相対化され、衰退しているという現象です。
この先起きてくるのは、スポンサーの離反をトリガーにしたジャニーズの衰退で、それはテレビの衰退を一層加速すると思います。恐らくこれはもう不可逆の変化でしょう。
それは、今までテレビや出版業界が、自分たちで資源依存関係を崩すほどの変革をしてこなかったツケが回ってきてしまったと言えるかも知れません。(宇田川元一さん)
イノベーションのジレンマ。
イノベーションのジレンマ:
業界トップになった企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品サービスを提供することが、イノベーションに立ち後れて失敗を招くという考え方。
この理論を知ったのはもうだいぶ前ですが、当時は大いに賛同して興奮し、新規事業で組織を良い方向に持っていくんだ!と更に張り切っていましたが、力及ばず…無念でした。奮闘したことは後悔していないけど、本当に顔なしの伏魔殿なのです。前職でのイノベーションの話はどこかでそれだけ書きたいぐらいに鬱憤が溜まっています笑。
小野淳さん
パチンコが換金制のあるギャンブルであることは誰でも知っており、日本ではかなり容易に安全に売春ができることは誰でも知っている。
芸能界と相互依存関係にある大手メディアにはいわゆる「コンプライアンス」や「公平公正さ」とは程遠いオトナの事情があることも誰でも知っている。
どれもが大衆を巻き込んだ大きな欲望の対象を商材として扱っていて、ゲームのルールも割と自由にコントロールして、中枢に行けば行くほど大金が動き、権力者の意向には逆らえない。
パチンコや売春はどこかアウトローな雰囲気が共有されているが、なぜか大手メディアや広告代理店は親も喜ぶ人気就職先となっているw
大衆はゲームのルールを作る権力者がいることを薄々感じながらも、身を削る出費をしてでも自分の欲望を満たす何かに心身を捧げる。
権力者が入れ替わっても、法律が細やかに整備されても、結局は大衆の欲望を満たす何かは供給され続けるでしょう。
キャンセルカルチャーを発動させる側が実は次の権力者かもしれません。
そう、誰でも知ってるんですよね。今回の件、私ですら昔から知っていましたし、ただの噂ではなく本当にそうだろうなという確度の高さも感じていました。とは言え関係者でもファンでもない立場としては何か抗議をしたことはないわけですが、そういう「中間のやつらが何もしないから」、世の中が良くならない。
権力に忠誠を尽くせば尽くすほど旨味を与えられる関係性。それはJ事務所の中だけでなく、関係する全ての組織やその権力が作り出すコンテンツをただひたすら楽しむ大衆も、その関係性をより強固にしているわけです。
相互依存関係が生み出す奇妙な商習慣。権力を持つ者に反対できない空気。大きな社会構造の闇を批判するよりも、応援したい眼の前の推しを優先して構造に無自覚に加担してしまう大衆。そこでますます強固になっていく不可思議で不健全なエコシステム。
※「エコ」という言葉は「環境に優しい」というSocial Goodなイメージで使われてきていますが、本来は生態系という意味です。
エコシステム(生態系):
ある領域(地域や空間など)の生き物や植物が、お互いに依存しながら生態を維持する関係のようす
日本の場合は、内部から生態系を力技でぶち壊すことはかなり難しいと思っています。誰しも、権力に従う前提で全ての物事を組み立てて動いているし、それに無理に抗う理由を持っている人がいないんですよね。だってそれで個人は平和にご飯を食べれているわけだから。「もうこの悪しき構造をぶちこわしましょうよ」なぞ口に出したとして、「わかってないガキがわめいてる」と言って取り合ってくれません。実際、何度か言ったことがありますが、何も起こせず起こらずでした。
そういう意味で、J事務所に所属していた元アイドルたちがBBCを使って抗議を顕にしたことは、彼ら個人の真意はわかりませんが大きなインパクトになり、すごいなと思います。真正面から行かなかったのは本当に賢いです。
構造をぶち壊すということは、その背後に仕事を失ってしまう弱き人も沢山いたりするんですよね。でも一時的には痛みを伴っても、一箇所に水がたまり続けて腐敗が蔓延してしまうよりは、全体が変化して絶えず新しい形に進化発展していくことが重要だと思います。万物は流転し、変化や消滅が絶えないことのほうが、生物としての自然な形だという諸行無常観は、日本人がそこはかとなく心で理解しているはずです。
変化をしかけてくれる勇気ある人たちがこれからも出てきてくれると思います。わたしたちはその変化を読み取って、いかに追従していくか、その選択に社会の一員としての矜持が問われていると思います。ぱっと見で力関係はよくわからないのですが、それを読み解くと、どこがネックになっているのかがわかるので、個人でも抗議運動をすることはできます。今回の例でいえば、タレントには非がないとはいえ、応援の仕方はグッズや雑誌を買うだけではないはずです。
不健全な組織に搾取される人たちが増えることのないように、違う形で応援するいろんな手段がどんどん増えていくといいなと思います。
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