こんばんは。昨日の真夜中、ニュースレター執筆後に海外ドラマを無理やり見てしまい、寝たのが朝4時だったのですが、その割に、今日は昼寝もせずに頑張りました。得意な仕事をやっていると時間は優雅に過ぎていくものですが、難しいプロジェクトは常に口の中に苦虫がいる感じになります。「アンタは真面目すぎるんだ。もっと軽い気持ちでリラックスしていこうよ!」とかクライアントに言われるのですが、いつも強烈なプレッシャーをかけてくるのも同じクライアントです。
そしてさきほど、本ニュースレターを旧知の先輩に紹介したところ、「まず、Subjectがクソ真面目すぎてつまらない。オレが知ってる真実のアンタは・・(略)」というようなことを言われて、いよいよ動揺しております。
そうか、私は真面目だったのか…?
現実の私は、計画が立てられなかったり、いい加減だったり、常識外れだったりするところが多く(というかガキっぽいので)、会社員時代は上司にものすごい激怒されたり、雷が落ちたりしていました。お客様にも「今の発言、撤回しろ!」って怒鳴られたこともあります。本当です。それって真面目って言わないと思います。故に、基本的には大目に見て頂けますと幸いです。
前職時代、ブロックチェーンを使った新規事業の立ち上げをブーストさせるために一時期参画していたサービスがあるのですが、それの競合サービスが、去年の12月頃に事業撤退していたことを今日知りました。
FTX破綻の陰でエンタープライズブロックチェーンに打撃──IBM、豪証券取引所のプロジェクトが失敗
ちょうど半日ラジオのNFTを配る会において、形式上、「ブロックチェーンとは」をご参加の方々に説明した矢先に知ったニュースでした。自分でブロックチェーンについてわかりやすく説明すればするほど、約5年前の当時、ブロックチェーンを使うという触れ込みで立ち上がった多くのサービスには、軒並みユースケースに無理があったよな、と思います。
この競合サービスも、これだけ投資して果たしてうまくいくもんかなぁと思っていたのですが、ついに化けの皮が剥がれてしまったかという悲しみと、意外に踏ん張ったんだなという感慨深さがあります。当時はブロックチェーンを敢えて使う必要はほぼないなと思われるものばかりでした。つまり、使わない場合との価値に、大きな差が発生しないサービスが多かったという意味です。
IBMと海運大手マースクは11月29日、利用が拡大しないことを理由に、共同運営していたブロックチェーンプラットフォーム「トレードレンズ」を終了すると発表した。
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「トレードレンズは基本的に、すべての人にすべてを提供しようとした。だが競合には、もっとニッチなものもある。それらは特定のステークホルダー、あるいはプロセスの特定の部分に焦点をあて、商業的成功を収めている。つまり、市場はすべてをカバーするワンストップソリューションではなく、特定の問題に対する、より具体的かつ的を絞ったソリューションを求めているのかもしれない」
———コンテナ船業界のコンサルタント会社CEO、ラース・ジェンセン氏「トレードレンズは、テクノロジーの失敗ではない。IBMの撤退や海運業界の景気サイクルと関係があるかもしれないが、技術とコンセプトは、外から見る限り、アーキテクチャ的には矛盾がないようだ」
———R3 最高技術責任者リチャード・G・ブラウン氏「全体的に見ればプライベートブロックチェーンというアイデア自体に根本的な問題があると考えている。こうしたプライベートブロックチェーン・ベンチャーは、すべて同じ基本的な問題を抱えている。Web2のビジネスモデルに、Web3の妖精の粉を少し振りかけたもの。妖精の粉が消えてしまえば、価値提案はそれほどホットには見えない」。
———EY グローバル・ブロックチェーン・リーダー、ポール・ブローディ氏
と、いろんなことをいろんな人が言っていますが、どれも正しいご指摘だと思います。おそらく当事者も初期フェーズから「アレ?これって…」と誰よりも気づいていたと思いますが、走り出した暴走機関車を止めるのは色んな意味で難しいものです。止めてくれる勇気あるスパイダーマンは大企業にはなかなかいません。
でもしっかりと撤退したIBMはさすがだなと思います。
話題性や新規性を求めて、何かの新しい技術にすがりたいという誘惑に駆られるのがITサービス業のサガです。私は昔から、安易に技術起点(≒シーズ起点)で物事を進めるのは好きではありませんでした。打ち上げ花火は上がるけど、あげっぱなしで、巻き込まれた真面目な人が尻拭いと無用なつじつま合わせに奔走し、おおむね徒労に終わりがちです。技術の本質は掴みつつ、常に「課題ありき」で考えないとダメだとワンワン吠えておりましたが、モノづくりだけで勝負している人が9割ぐらいを占めていた職場では、議論が噛み合うことがありませんでした。
#ずっと平行線
#意識が朦朧としてシーズとニーズが混同してくる
#そんな概念の話はもうやめようよとか言われて終わる
なお、技術面の検討がいらないと言いたいのではなく、【技術(≒シーズ) × 課題(≒ニーズ)】がベストマッチしないと意味がないという意味です。かつ、もし新技術を使うなら、それによって驚きの変革が起こらないと、「新技術使ってます」だけではなかなか社会には普及しません。するはずがありません。そうは問屋がおろしません。新技術ありきで考えると、どうしてもこじつけやアンマッチが多くなりがちで、関わる人が後々不幸になる確率も高いと思っています。むしろベストマッチするのが枯れた技術なら、全然それ使えばいいじゃん、と思います。
今はChatGPTから始まった突如の生成AIブーム真っ盛りですが、例えば、課題解決のためには「ただの単純な文字列完全一致検索」が最適なシーンに、なぜか「AIによる微妙なニュアンスを汲み取った幅のある検索」を導入してしまうとか、単純化するとそういうことに対する反論を私はしております。
新しい技術を社会実装するときは実証実験が付き物ですが、実証実験も正確に報告されているか怪しいケースがとても多いなと思います。本当にその課題は、その技術でドラスティックに解決できるのか?本当に?という点を、責任者がちゃんと直視しないといけません。特に、長年に渡って解決されてこなかった重たい問題は、それなりの重たい理由があるものです。それを新技術の一つや二つ(上記の記事で言うところの「妖精の粉のふりかけ」)を使うだけで解決できるわけがないので、社会を変える新しいサービスというのは、新技術を使うことの前にやはり社会構造の解析を徹底するに尽きる、と私は思います。そうじゃないとどこにメスを入れないといけないのか、どこが梃子になるのか、わからないままです。
そんでもって、やっぱ無理だなと思ったら早めにPivotです。それが当たり前のカルチャーになると、もっと面白いサービスが沢山出てくると思うんですけどねぇ。
ただ、新技術で遊ぶのは、本当に最高です。むしろ、遊んでたら最適なユースケース見つけた、ってことの方が多いんじゃないかなと思います。机の上で難しい技術書で勉強して、頭でロジカルに企画書を作るのではなく、実際に手を動かして遊びまくってたら偶然こんな使い方見つけた、的な流れの中に、イノベーションの種が隠れているのではないでしょうか。
というわけで、本日も真面目にお送り致しました。
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