こんばんは。久しぶりに最高にフリーダムな休日を過ごして、ごきげんです(あれ、仕事は…?)。興味の赴くままに本を読んだり作業したり、調べたり、漫画(ラストをすっかり忘れていたので進撃を読み返す)を読んだり、お昼寝したりしていたら時間が溶けました。最高です。
昨日のPostの最後で、サイバー空間での新たな分断という話をしましたので、その続きです。フリーダムといえば国際NGOのFreedom House。この団体がインターネット自由度ランキングを毎年発表しています。下記はFreedom on the Net 2022から抜粋した絵です。
緑:自由である(国家による監視干渉のない国)
黄:部分的に自由である
紫:自由ではない
灰:分析不能
インターネットが自由、もしくは部分的に自由である国は約半分で、欧州北米系と、APACでは日本・オーストラリア・台湾などが「自由」に当てはまります。ウクライナも自由の国。反対に自由でない国は3分の2にあたり、中国・ロシア、APACではタイ・パキスタン・ベトナム・ミャンマーなどが該当します。だいたい想定通りというところでしょうか。ただ、日本にいると実感が湧きませんが、「自由である」国は年々減ってきているようです。ちなみに、日本はランキングにして2022年は8位でした。
これを見ると、まさに東西の分断を彷彿とさせます。イアン・ブレマーは「デジタルのベルリンの壁」と表現しました。
アメリカ等旧西側諸国の「自由であるべき」という主張は、インターネットは民間投資によって構築されてきたので、可能な限り自由に行われるべきで、国や政府の規制は最小限に留めるべきであり、リアル空間の既存の国際法が適用されることでよいのではないかという考え方に基づいています。
一方、中国・ロシアの旧東側諸国の主張は、現在のインターネット空間はアメリカ中心のルールに基づいて運用されており、インターネット空間においても国家主権の名のもとにそれぞれの国が管理すべきだと言っています。アメリカが主張している「サイバー空間への国際法の適用」については、国家主権・平和的紛争解決・内政不干渉が重要であり、それ以外の自衛権などについて適用するのはおかしいと言っています。
この状況下において起きた今のロシア・ウクライナ問題では、イーロン・マスクがStarlinkをウクライナに無償提供したり、ウクライナでは「IT Army of Ukraine」という組織が誕生しており、民間のサイバー人材(大半が海外に住むウクライナ国籍の人)が集まって、テレグラムから指定されたロシア重要施設へのサイバー攻撃などを繰り返しています。
そんな今回の侵攻は「認知戦」と言われています。偽情報が出回ったり偽ニュースサイトが作られたり著名人の偽アカウントで発信されたことが大きな影響を及ぼして攻撃に繋がるなどの事象が起こり、そしてそれに対抗するためのファクトチェック機関が出てきても、さらに偽ファクトチェック機関も出てきたりと、大混乱のいたちごっこになっている模様です。SNSを活用した戦況把握も当たり前になってきました。
戦争のやり方も、今までは「宣戦布告」をして武力行使を始めるのが通例でしたが、それが行われる前にサイバー攻撃が始まっているため、正式な”開戦”のポイントを認識するのも難しくなっている、つまり平時と有時の境目が曖昧になっているということです。また、サイバー攻撃も充分な打撃を相手方に与えてしまうにもかかわらず、それを「インターネットは自由である」という考え方のもとで国が黙認するということであれば、同様に「武力行使」の境目も曖昧になってしまい、根源的な「自由なインターネット」のあり方に疑問も生まれてきます。これは誰にとっても恐怖でしかありません。
この状況を、アメリカの外交問題評議会報告書(アメリカ議会の超党派による評議会)では、「The era of the global internet is over」と記載しています。その上で、”有志国”との連携の強化を図ること、特にデジタル貿易協定を結ぶべきだと提言されています。昨日Postしたファイブアイズと同じ流れです。
リアル空間と連動してサイバー空間においても世界は大きな分断が広がる一方です。インターネットは各国にとって最重要インフラに位置づけられているため、手前勝手な主張で活用し始めると、安心な生活すら脅かされることにもなります。私たちの生活はほとんどをメガプラットフォーマーとなったアメリカの民間企業に依存してしまっていて、以前のPostでも書いた通り、生命線であるデータが乗っているクラウドサービスはアメリカに寡占されている状態なわけですが、それは利益を独占されていることが問題ということに限らず、個人情報も独占されているし、その結果として生活も大きく依存しているし、しまいには思想のコントロールもされうる懸念も少なからずあると思います。
#もちろん毎日Google使ってますけどね
デジタル貿易協定の是非については、私は現段階でなんとも言えませんが、協定ではなく運用ルールを主義主張を越えて合意していく必要があると思います。そんなことできてたら最初からやってるわけで、だいぶ前から議論は膠着状態です。世界に対して自由な言論表現の場が保たれる重要性を維持しながら、自分たちのデータが安全に守られ、適正な用途で使われていく世の中にしていくためには、超オープンなインターネットレイヤ以外にも、安全なデータ流通ができる新たなネットワークレイヤができたり、それを国や個人が自ら選択できるような環境になるといいなと思いますし、NTTのIWON構想などは、本来はそういう目的も含めて研究開発されるべきと思います。
#そろそろ頼むよ
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